個人‐企業‐政府という三者の関係でみた場合、セーフティーネットはもっぱら「個人‐企業間」(終身雇用)「企業‐政府間」(財政・金融政策、様々な助成金などの支援措置)の関係が中心で、「個人‐政府間」の関係が議論になることは少なかった。セーフティーネットと言えば、医療、教育、住宅などが代表的なものだが、日本では政府が無償で提供するというよりも、自己負担を原則としてきた観の方が強い。医療はフリーアクセスで自己負担も抑制されてきたものの、最近は自己負担が増加する一方である。
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また、先進国でも教育予算が少ないことは有名だし、住宅は持ち家政策が推進されてきた。自己負担の強さはセーフティーネットの手厚い欧州諸国と比べれば一目瞭然である。その意味では、決してセーフティーネットが手厚かったわけではないのだが、それが目立たなかったのは、雇用の場が確保されていたからである。企業が終身雇用制度を採用することで、多くの人が安定した雇用の場を得て、それによって所得を得て、税金を納めて自助努力中心のセーフティーネットを利用してきた。言い換えれば、日本のセーフティーネットは企業‐正社員‐終身雇用制度を軸にして成り立っているのであって、企業が不安定化すれば、セーフティーネットの在り方自体を見直さざるを得ないということである。企業の存在自体が不安定化する今、我々が議論すべきなのは「個人−政府間」の関係なのである。もはや「個人‐企業間」の関係だけではセーフティーネットになり得ない時代に入っている。それどころか、終身雇用制度という「個人−企業間」のセーフティーネットに依存しすぎて、「個人−政府間」のセーフティーネットを構築しなかったために、雇用を失えば即座に生活不安になるという事態になっている。